GARDEN CITY LIFE~annex~

お越しいただきありがとうございます。当ブログは清水玲子先生の『秘密』のレビュー(時にネタバレ)と二次創作(こちらは一部BL要素含)のざっくり二部構成になっております。記事は単純に日付順に表示されておりますので、お読み頂く際はサイドバーや記事一覧などでカテゴリーをご確認またはセレクト頂けますと安心、安全です<(_ _*)>

薪にゃんと一緒(マンネリを吹き飛ばす秋の夜長編) 

先日、久々にドラマを見まして。連ドラでハマっていた、『デート』の特別編なんですけどね、これがまた面白くて。色々刺激になる内容だったんですが、中でもツボだったのが毎回名言(迷言)を繰り出す依子母のこのひとこと。
「男っていう生き物はね、みんなめくりめくってみたいものなの」
めくりめくるって(笑)
いやそれ男も女もないのでは(;^ω^)?女だってめくりめくっちゃいたかないですか?(´∀`*)ウフフ
で。そうそう、めくりめくっちゃった薪さんを書いてみたいわ(≧∇≦)と思ったのですが、すっかりふざけた色気のかけらもない話になりました。だってほら、さすがにふたつ続けてめくりめくっちゃうと(あ、そうでもない?)なんなんだかほら…らしくないでしょ(笑)←嘘です、らしいも何も本人が冷静でいられないだけ(笑)

というわけで今回はポップなカラーでおなじみのあの季節ネタです。おもむろですが前回のお話に拍手をくださった皆様、ありがとうございました。そしてゴメンなさい(。-人-。) これまた久々のわがまま薪にゃんです。原作とは一切関係のない架空の生き物ですので、どうぞ目を瞑って堪えて下さい(;´Д`)

※今回は多分Rつけなくて大丈夫です…穿いてますから(笑)

 




『薪にゃんと一緒(マンネリを吹き飛ばす秋の夜長編)』※見切り発車してしまったのであちこち手を入れとります、ごめんなさい



 今日の僕はひと味違う。いつもの猫耳としっぽは定番としてキープしているが、秋仕様なのだ。
 普段は世の中の流行りものやお祭り騒ぎには無頓着な僕だが、思うところあってのってみることにした。秋のイベント、ハロウィンというやつに。
 それにしても動きにくい。僕は胴体を包むようにボワんと広がったケバケバしいオレンジ色をした衣装を見下ろした。自分でセレクトしておいて言うのもなんだが、品がない色だと思う。きっと今後の人生で二度と身にまとうことはないだろうから、記念だと思えばなんとか我慢はできるが…。
 そして、こんな時に限って今日はあいつがいつにも増して遅い。とうに帰っているはずなのだが、部屋に戻らないのだ。僕の登場シーンは見せてやるわけにはいかないので毎回留守を狙って先回りするのは仕方ないのだが、家の中にいるのは確かなのに一向に姿を見せない。またトイレにでもこもっているんだろうか。青木には僕の来訪はわからないだろうから仕方がないのだが、一体いつまでこうして無為に時間を過ごせばいいのだろう。
(そおっと見に行ってみるか)
 この部屋から出たことはないが、このままじっと待っているのもいい加減疲れたし、もしかすると突然の病気などで倒れている恐れもある。青木は若いが、室長勤務は過酷なのだ。
「……!?」
 ところが。いつもならひょい、と年の割には身軽に立ち上がれるというのに、途端に尻餅をついてしまい愕然とする。自分が極度に着ぶくれていたことを思い出し、さっと血の気が引いた。にわかには信じがたいが、床に手がつけられない。床に投げ出した足も、膝が思うように曲げられない。座る時は弾みで簡単に座り込めたのだが、僕としたことが逆のパターンは考えていなかった。まさか手を引いてもらわないと立つこともできないのか…?冗談じゃない、そんなの、人間として終わっているじゃないか。なんたる失態…これじゃあまるで本物のかぼちゃだ。
(かぼちゃはキグルミだけで結構だ…!!)
「気合いと…根性ぉっ…!」
 腹筋に力をこめ、極限まで足を曲げて手は思い切り前に伸ばす。そのままテヤアッ!と溜め込んだ力を解き放ったが、僕の体は半分も宙に浮かないまま呆気なく着地し、しかもその弾みをキグルミがまともに食らって軽くバウンドした挙句、小さなバウンドを繰り返しながらコロンと後方に転がってしまった。
「――った!なんだこれ!」
 キグルミの厚みで頭こそ打たずに済んだが首が苦しい。ついでに中途半端に浮いた手足のせいで体が安定しない。左右にゴロンゴロンと揺れる体は、いっそうつ伏せになった方がマシな無様な苦しみをもたらした。青木が戻る前に何としても事態の改善を図りたかったというのに、なんということだ…思わず涙が出そうだった。
 誰か、ひっくり返して下さい…。
 そんなことを思った時だった。
「…………何やってるんですか?薪さん…」
 ガチャ、とドアが開く音がして、聞きなれた声が心底呆れたという響きをたたえ届く。残念なことに言葉を発した青木の姿は確認できなかったので、その時の表情がどうだったのかはわからない。でも、きっとすっかり幻滅した顔で床にひっくり返った僕を見下ろしていたに違いない。しかもいつもの猫耳しっぽならまだしも、よりによってかぼちゃのキグルミなんかを着込んだ僕を…。
 不覚だ。もうこのままいっそひと思いに殺してくれ…でもその前に。
「さっさと起こせ、バカ!」
「馬鹿って…」
 なんで俺が怒られなきゃいけないんですか、とぼやきながら、ようやく僕の視界に入ってきた青木はゴロゴロともがく僕の身体を背中から掬い上げるようによいしょと抱き起こした。
 あぁこの安定した視界が懐かしい…じゃなくて。
「これはだな、その…ちょっと事情が」
「退屈で床に座り込んでくつろいでいたら立ち上がれなくなっていて焦ったら転がっちゃったんですね」
「……珍しくご明察じゃないか。なかなか立派な室長に育ってくれて嬉しいぞ」
「……はぁ」
 微苦笑を浮かべてそう言うと、青木は傍らのベッドに腰を下ろして手にしていた書類に目を落とした。
「せっかくなのに申し訳ないんですけど、俺明日こっちの姉妹都市の市長さんが視察にみえるんでMRIの概略やシステムについてなんかを一通り説明しなきゃいけなくて――まぁ一時間足らずなんですけど、苦手なんですよね、そういうの。そもそも会話が日本語じゃないですし。もういっぱいいっぱいで」
 ただでさえ若造扱いされてるのに、日本人てなんか子供っぽく見られるって言うじゃないですか。せめてもうちょっと貫禄があればはったりがききそうなんですけど、ちょっと躓くともうガタガタっと崩れちゃうんですよねぇ。それに想定外の質問とかされるの弱いし。誰かさんみたいに口から出まかせでもなんでも堂々と流れるように受け答えできればいいんですけど場慣れしてないのもあってアドリブきかないんですよね…。さっきもトイレの時間も勿体なくてこれ持って行ったんですけど、そうしたらつい入りこんじゃって長時間居座っちゃいましたよ。
 ずっと視線は手元に落としたまま、青木はぶつぶつとひたすら愚痴っている。こいつ、今前にいるのが誰だか完全に失念しているらしい。僕は一応遥か高みのおまえの上司!科警研所長!知ってるけど改めて自分の不甲斐なさを披露するな!
「このところ立て続きに難事件ばっかりあったもんですから事前の準備に回す時間がなくて、安心できるほどシミュレーションできてないんですよ…ああそうだ、舞の写真はちゃんと持ってかなきゃ」
 ……こいつ。
「おい」
「はい?」
 何がはいだ。
「何うろたえてる。それくらいぶっつけでも何でも何とかしろ!おまえ東大法卒、記録的な若さで第九の室長に抜擢された逸材じゃなかったのか」
「…誰がですか?それって薪さんでしょ?」
 もう、こんな時にいじめないで下さいよ。そう言うと青木はハァと大仰に溜息をついた。
「あ、そう言えばもうすぐハロウィンでしたっけ。何ですかそれ?科警研でパーティーでもあるんですか?」
 にしても薪さんが仮想なんてありえないですよね、皆ひっくりかえっちゃいますよ、ハハハ。
「これはおまえ向けに用意したコスプレだ――喜ぶと思って」
「?喜ぶ?かぼちゃで…?」
 中途半端に笑ったまま、青木は怪訝そうに僕を覗き込む。頭はいいはずだが意図がわからないらしい。
「ああ。好きだろ、コスプレ。この前酒の席で岡部たちがそんな話をしていた。僕が意味が分からないと言ったら男ならみんな好きでしょ、薪さんってばとぼけちゃって、と言われた。男がみんなってことはおまえもなのかと思って。それに雪子さんにも剛くん大丈夫?そろそろマンネリ化する頃じゃないのぉ?たまには不意打ちのコスプレでも披露して悩殺してやらなきゃ浮気されちゃうわよぉ、と言われてな」
 できる限り彼らの口ぶりを忠実に真似たつもりだったが、どこがおかしかったのか青木にはブッとふき出されてしまった。
「何ですそれ!意外と似てるし!…あ、でも俺が浮気なんてあり得ないですよ?もう馬鹿だなぁ薪さん、心配性なんだから。それに俺はそういう趣味無いですし、あったとしてもかぼちゃじゃ悩殺なんて無理ですよそんなののどこに欲情するって言うんですか」
「……そうなのか?」
 僕は言いながら青木の足元に腰を下ろそうとして――危うく二の舞になりかけるところだった。二度とごめんだ。さっさと着替えなきゃ…。
「青木、悪いが後ろのファスナー下げてくれ」
「ああはい」
 悪いが、というのも変な気がしたが、この場合それが一番自然だろう。チョイスを間違うくらいなら事前にコスプレについてリサーチしておけばよかった。とりあえず季節もので目に留まったものをチョイスしたんだが…。
 ……ああそうだ。
「そう言えばもう一つ持ってきてるんだ。青木、そのまま向こう向いてろ、今準備するから」
 とりあえずかぼちゃを脱ぎながらそう言って振り向けば、青木は既に定位置に戻ってお勉強中だった。ハイわかりました、と顔も上げずにおざなりな返事をよこす。いささか腹立たしいが仕事場でもないしあまりしつこく絡んで明日の失態を僕のせいにされるのも癪だ。僕はかぼちゃから脱出すると持ってきたバッグの方に移動し、中からもう一つの衣装を取り出した。実はこっちの方がいいような気もしたのだが…。
 
※ただいまお着換え中です☆覗かないでね※

「よし!いいぞ」
 我ながら完璧な仕上がりだ――と、鏡は無いが自画自賛しつつどうだと振り向けば、顔を上げた青木は薪さんベタ!ベタすぎますって!とたちまち爆笑をよこした上に、笑いすぎて滲んだ涙を手の甲で拭った。僕の努力に対してこの上なく失礼な反応だ。
「魔女っ娘ツヨシって感じですね!」
 アハハ、と自分で言ったことに自らウケている。誰が娘だ。
 僕が用意していたのは羽のついた紫のとんがり帽に紫のマント、黒のロングドレスにグローブという魔女の衣装だったのだが、オプションの箒は邪魔になるので(というかかぼちゃで手いっぱいで)置いてきてしまい確かにいささか説得力には欠ける。でも悩殺と言うならこっちの方が相応しくないだろうか。
「……馬鹿にして」
「いや、馬鹿にはしてないですよ?似合ってるし…でもそういう市販品って衣装が安っぽいからどうしても学芸会くささがあるんですよねぇ。それじゃあいくら薪さんの色気をもってしても厳しいものがありますよ」
 なるほど。…っておまえ、本当にそれしか感想は無いのか。
「じゃあすみません、今日は俺、ほんとに手いっぱいで。せっかくなのに申し訳ないです」
 さっきまでは爆笑していたくせに、青木はもう素に戻って「続きしますね」と仕事モードに切り替えてしまっている。
「……」
 いつぞや僕がいる時は仕事はしない、ないがしろにはしないって反省したんじゃなかったのか?というつっこみはぎりぎり呑み込み、僕はその場に座り込んだ。どうやら本気で間が悪かったようだ。キャパが小さい男を好きになった宿命だ、甘んじて受け入れるしかないのかもしれない。だが、このまま帰るなんてこともしたくない。
 …まだ触れてもいないのに。あっさりしすぎてやしないか?
 まさかこれが本当にマンネリ、倦怠期ってやつなのか?
 そう思い始めるとグルグルと雪子さんの意地の悪い囁きがその時の薄ら笑いと共にエンドレスに脳内に流れ出し、僕は慌ててかぶりを振ってそれを追い出した。
 いや、そんなことはない。青木は僕にメロメロなはずだ。猫耳にしっぽのこの僕がマンネリや倦怠感に負けるはずがない。手触りも良く美しい毛並みや肉球だってあるのだから。
 …しかし、ここはともかく着替えた方がよさそうだ。それから仕切り直せばいい。
 もう一度バッグの方へと這って移動する。目的の場所に座りなおし青木に背を向けて帽子を取った僕は、ふと視界に飛び込んできたそれに手を止めた。
 青木の大きなワイシャツ。僕が着れば短めのワンピース風になってしまいそうな真新しいそれが、ハンガーにかけてすぐ前の壁に吊るしてあるのが目に入ったのだ。
「…………」
 気はすすまないが、かぼちゃも魔女も無理なら王道で勝負するしかなさそうだ。
 いざ。
(彼シャツ!!)
 いつだったか鈴木に聞いたその秘技を、まさか男の僕がここで青木相手に実践することになるとは――しかも中年になって。でも鈴木によればそれは最強の男の夢だという。ただのシャツなのに。
(いや、されどシャツなのか…?)
 青木は手元の書類にぞっこんで全くこちらを気にするそぶりは無い。僕はこれ幸いと着ていた衣装を脱ぎ、素肌にハンガーから滑らせたそれを羽織った。そうっと気取られないようにボタンを留める。長い袖にすっかり指先まで隠れてしまい、改めて体格の差というやつを思い知った。なるほど、女の子が着るとこうなるのか…あまり身をもって感心したくはないが現実は直視せざるを得ない。
 僕はそのままズボンは穿かず、そろそろと足音を忍ばせて青木の前に移動した。かぼちゃや魔女の時は平気だったが、さすがにこれは露出が多くてドキドキと心臓が早鐘を打つ。下半身がスースーして落ち着かなかった。女性はよくこれで平気でいられるものだ。僕は慎重に青木の正面を確認し、コホン、とおもむろに咳ばらいをすると、すこし甘ったるい声音を意識して恋人の名を思わせぶりに口にした。もちろん、余裕の微笑みで。
「ア、オ、キ」
 ひょい、とヤツがにらめっこをしている書類を取り上げるとそのまま床に落とす。青木はまず目だけで僕の足元を確認し、弾かれたように顔を上げた。うまくいったように思う。僕は勝ち誇った気分でこみ上げそうになる笑いを押し殺し、ぽかんと口を開けた青木を見下ろした。唖然として僕を見あげている恋人の様子がおかしくて、そしてちょっとだけ嬉しい。
 ――が。
 どうやらその唖然は僕が思っていた反応とはリアクションは同じでも対象が違っていたらしい。
「ちょっと薪さん!それ明日着ていく新品のワイシャツ!買ったばっかなんですよ!?」
 汚したらどうするんですか!ああもう毛がついてるし!と慌てる様がつくづく腹立たしい…。
 そうかそうかこれでもかおまえは。
 わかった。
 もういい。
 僕はさずがにふつふつと湧き起る怒りをぐっと抑え、それでもいささかムッとする気持ちは六割くらい表情に出しながら青木の太ももに跨って座ると、その肩に両手を乗せ、身動きできないようにがっしりと掴んだ。多少爪を立てたかもしれないが気にしない。無言のままの僕に、青木は今頃になってひきつった薄笑いを返してくる。
「……す、すみません薪さん」
 ゴメンナサイ、と小さく呟く青木の唇は、言葉半ばで僕が奪った。
 姉妹都市の市長だか何だか知らないが、たった小一時間しか顔を合わさない要人と僕のどっちが大事なのか思い知ればいい。この僕が貴重な労力を割いて趣向を凝らしたマンネリ対策を講じてやったというのにこの冷めきった対応は許しがたい。予習なんて明け方の一時間もあれば十分だ。
 青木の口内を味わうように嘗め回す深い口づけにうっかり自分が酔いそうになるのを、ささくれだった気持ちが引き留める。
 とても愛しているっていうのに、ずっと求めてるっていうのに、時折激情が暴走しそうになる。どうしようもなくわかっていないこいつを痛めつけてやりたくなる。そういう理不尽な気持ちに支配された僕はとても醜悪な悪意の塊で、自分で自分に吐きそうになる。僕は愚かだ。拗ねた子供のようにみっともない。わかっている。
 息をする間すら惜しんで青木の唇を貪っていると、ふとシャツの裾を捲るような気配があって青木の長い指が腰のあたりを這った。
「?」
 ぱっと顔を背けるようにして僕から逃れた青木が、身をかがめて何かを確かめるようにシャツの中を覗き込む。ほどなく、ああやっぱり、と言うと、急にアハハハハ、と笑い出した。……人の服を捲って覗いておいて何がおかしいんだ。
「おい」
 口の端からこぼれた唾液を手首のモフモフで拭いながら睨んでやると、ああすみません、ともう何度目かわからない謝罪の言葉を口にした青木は僕の頭に手をやり、まるで聞き分けのない子供をあやすような仕草でポンポン、と撫でるように軽く叩いた。
「おかしいと思ったら穿いてるじゃないですか…やっぱり惜しいですね、薪さん」
 惜しい?何の話だ。首をかしげる僕の腰のあたりを指さすと、青木は下ですよ、とおかしそうに言った。
「彼シャツで迫りたいなら、下は下着も何も穿いちゃダメなんですよ?」
「穿かない?そうなのか?」
 そんなにだらしなくていいものなんだろうか…シャツはシャツでも僕が着ているのはワイシャツなんてビジネスアイテムなのに。
「そうなんです。…って別に俺もその辺詳しくはないですけど多分。それに第一ボタンまで留めちゃダメです。こういうのはラフに着崩してなんぼなんですから」
「……そうなのか?」
「ハイ。だってどうせ脱がすんですよ?効率が悪いじゃないですか」
「……そうか。それもそうだな。なるほど理にかなっている」
「はい」
 頷きながら、何故か青木はクスクスと肩を揺すりながら笑い続けている。僕が不審げに見つめると、青木は片手で口元を覆ってもう一方の手をひらひらと顔の前で左右に振り、ゴメンナサイ、を繰り返した。
「ああもう薪さん、薪さんてなんでそんなに…」
 クスクスクス。
 青木の笑いは止まらない。
 またあの苛々と恥ずかしさがこみ上げてきて、僕はボスッと青木の鳩尾にグーパンチを見舞ってやる。イタタタ、と言いながらもしつこく笑う青木は、はぁ、と大きな溜息をついて笑いの発作を何とかくい止め、膝の上で途方に暮れていた僕をぎゅっと抱きしめてきた。
「大好きですよ」
「………そんなことは知ってる」
 本当に。
 本当に悔しいけれど、こいつは僕のご機嫌取りに誰より長けている。
 愛おしそうに僕の背中を撫でるてのひらの感触はあっという間に僕の波立った気持ちをフラットに安心させる。すっかり戦意を喪失した僕を、青木はゆっくりと壊れ物でも扱うようにベッドに横たえると、しっかりと留まったワイシャツのボタンを一つずつ丁寧に外していった。
「汚さないうちに脱いじゃいましょうね」
 微笑みながらそう言うと、青木はいつものようにそっと優しく僕にキスをした。ようやくその瞳がまっすぐにこっちを見て、その変わらなさに僕はまた一つ安心する。目を閉じて青木を受け入れながら、僕はそのぬくもりを全身に求めた。
 ハロウィンでは仮装した子供たちが家々を回ってお菓子をもらう風習がある。色鮮やかで心が湧きたつような甘くておいしいお菓子。それはかりそめの夢の時間を子供に与える魔法のアイテムだ。青木のキスはどんなに甘いお菓子より僕には魅惑的で甘やかさに満ちている。たとえ一時の安らぎでも、心から何度でもそれを求めさせる魔力がある。魅了されているのは僕の方――だから馬鹿みたいに振り回されて、おかしくなるんだ。
 こんなに甘いお菓子を貰っちゃもういたずらはできないな。けれどそんなことを考える僕の思考は、今度はあっという間に青木が鮮やかに奪い去るのだった。



(おしまい)



お菓子下さい(笑)
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Comment

Name - eriemama  

Title - Re: 事後報告で……

> 事後報告で大変申し訳ないのですが、このお話のコスプレ薪にゃんのイラストを描かせていただきました〜
> 勝手に描いちゃってすみません。
> NGあったらおっしゃってください……

いや、そんなん!気にせんとってください(^^;)
どこにでもあるベタなコスプレですから!
でも嬉しい~wイメージだけだったのが二次元になるとは!
ありがとうございます、見に行きますね!( *´艸`)
2015.10.22 Thu 22:40
Edit | Reply |  

Name - ねこじゃらしにゃんたろー  

Title - 事後報告で……

事後報告で大変申し訳ないのですが、このお話のコスプレ薪にゃんのイラストを描かせていただきました〜!

勝手に描いちゃってすみません。
NGあったらおっしゃってください……

でもカボチャが正面から描けなかったの………(笑)
2015.10.22 Thu 22:35
Edit | Reply |  

Name - eriemama  

Title - Re: 面白かった!

> 薪にゃんの思考回路が面白すぎる! 薪さんだと100%絶対にありえないのに、薪にゃんだとありえるかもって思えるところがまた…。そしてかわいい♪

たきぎさんも、ありがとうございます!そうですね、薪にゃんだからこその自由さ(笑)
薪さんでこれをやる自信はないです(^_^;)

> ハロウィンか~。うちも何か作るかな。

ハイ是非!ピグ絵本でもSSでも!
待ってまーす!

> なみたろうさんに続いて遅めの夏休みをとって温泉に一泊してきました。
> 飴はないですが、かわりに温泉まんじゅうをどうぞ~。

いいですねぇみなさん温泉。私も久々にだんじり湯にでも入りに行こうかなぁ←それ銭湯(・・;)
温泉まんじゅう、ありがとうございます!いろんなアイテムが揃ったので
レベルアップ(←?)できそうですw
2015.10.07 Wed 23:30
Edit | Reply |  

Name - eriemama  

Title - Re: ( ,,>З<)ブプッ笑いすぎましたヨ

> ああ、こんな明るい楽しそうな薪さん、ここじゃなきゃ見れないけど、これはこれで幸せそうなのでこれからも続けていってください。
> 笑いすぎました。シーンがイメージできるの。すごい。お話お上手!

ありがとうございます(^^;;
シーンがイメージできるのはですね、きっと説明くさいからですよ(笑)
改めて読み返してしみじみ思いました(-。-;この情緒のなさ、なんとかせねば…

> カボチャも魔女も一生懸命セレクトしたのね、それなのにっていうか、そういうのセレクトしちゃう残念さがもう、薪にゃん、かわいい。

うちの薪にゃんは残念で甘えた、めんどくさ可愛い、が特徴になっています(笑)
そんなだから青木は割とクールなのかな(⌒-⌒; )
原作薪さんにこの薪にゃんのがっつき加減があれば…ないですね(笑)

> この後、二人は楽しい夜を迎えたのですね、きっとそうなのですね。お菓子をもらって幸せな子供のような幸せな夜を。

ハイ!めくりめくっちゃっていることかと(笑)
いや、薪にゃんだからもっと可愛く甘々な感じかな?(^◇^;)
もうご想像におまかせです…。

> 私からは最近お気に入りの「きなこチョコ」を。薪さんホルモンと一緒にイソフラボンをどうぞ!

おお!女子必須のイソフラボン!きなこチョコ…市販品ですか?食べたことないけど、美味しそうですね(^^)。
私、昔懐かしいきな粉棒とか駄菓子屋で見るとつい買っちゃうんですよ。わらび餅も黒蜜とかじゃなくきな粉、
ヨーグルトもシリアルかきな粉(笑)なのにホルモンバランスが安定しないのはお年頃ですかねぇ?(ーー;)
納豆だってよく食べてるのになぁ…( ; ; )
2015.10.07 Wed 23:18
Edit | Reply |  

Name - たきぎ  

Title - 面白かった!

薪にゃんの思考回路が面白すぎる! 薪さんだと100%絶対にありえないのに、薪にゃんだとありえるかもって思えるところがまた…。そしてかわいい♪

ハロウィンか~。うちも何か作るかな。

なみたろうさんに続いて遅めの夏休みをとって温泉に一泊してきました。
飴はないですが、かわりに温泉まんじゅうをどうぞ~。



2015.10.07 Wed 21:00
Edit | Reply |  

Name - ヤマネ  

Title - ( ,,>З<)ブプッ笑いすぎましたヨ

eriemamaさんの薪にゃん、かわいくて面白くてたのしい。
ああ、こんな明るい楽しそうな薪さん、ここじゃなきゃ見れないけど、これはこれで幸せそうなのでこれからも続けていってください。
笑いすぎました。シーンがイメージできるの。すごい。お話お上手!

カボチャも魔女も一生懸命セレクトしたのね、それなのにっていうか、そういうのセレクトしちゃう残念さがもう、薪にゃん、かわいい。
だけど、よっぽどマンネリとか言われて悔しかったんだ(笑)。僕の目の前で!っていうくらい負けず嫌いのプライド高い人だから。
そしてさらに頑張るけど、ちょっとずれている薪にゃん。下穿いちゃってるとか、ブラック鈴木さんの微妙ななに教えたんですか、薪さんにっていうツッコみしたくなるけど。

青木くんのスルーっぷりがまたいいです。薪にゃんになると急に強気になる青木くん。薪にゃんの頑張り、振り向いて欲しい感じが、ぜひ、薪さんにも素直になってちょっとでも出してくれればいいのになんて思っちゃいます。

この後、二人は楽しい夜を迎えたのですね、きっとそうなのですね。お菓子をもらって幸せな子供のような幸せな夜を。

私からは最近お気に入りの「きなこチョコ」を。薪さんホルモンと一緒にイソフラボンをどうぞ!
2015.10.07 Wed 18:36
Edit | Reply |  

Name - eriemama  

Title - Re: 薪にゃんたら

Re: 薪にゃんたら
> なんで悩殺でかぼちゃ!?
> 実地の経験がないにも程がある(笑)

あ、やっぱり程がある?(笑)
そうです薪にゃんは極端…(^◇^;)実地浅すぎ偏りすぎ(爆)
かぼちゃで悩殺できる男はいないでしょう…(-。-;

> でもかわいい。その経験のなさに、ある意味悩殺。

ハイ、初々しさといじらしさで悩殺(笑)
一生懸命頑張ったんだモン!を書いてみました^^;

> あと彼シャツ第一ボタンまで止めてるのも。

薪にゃんは几帳面なんで(笑)薪さんも3巻あたりはシャツパンツインせずラフに着てましたよね、
ノーネクタイで。しかも半袖。所長さんの今はああいうのないだろうなぁ。あれ、隙だらけっぽくて
大好きでした(笑)

> つか、鈴木さん何教えてんの………

ブラック鈴木…あわよくば彼シャツさせようとしてましたねきっと(⌒-⌒; )

> eriemamaさんにはうちの秘蔵のラミーを差し上げます……!

ラミー!!もうそんな季節か∑(゚Д゚)ありがとうございますどこら辺にあるのかな?
今日探してみよ(笑)
ラムレーズン大好物です!大人の味ですよねぇ。
量は食べられないしあっさり好きかもしれない薪さんにも似合いそうw

コメントがあった記事を読む
2015.10.07 Wed 09:35
Edit | Reply |  

Name - ねこじゃらしにゃんたろー  

Title - 薪にゃんたら

なんで悩殺でかぼちゃ!?
実地の経験がないにも程がある(笑)
でもかわいい。その経験のなさに、ある意味悩殺。

あと彼シャツ第一ボタンまで止めてるのも。

つか、鈴木さん何教えてんの………

でも結局ラブラブ(死語)なんですね(^0^)

eriemamaさんにはうちの秘蔵のラミーを差し上げます……!
2015.10.07 Wed 01:11
Edit | Reply |  

Name - eriemama  

Title - Re: ギャグで来たか~ッ!!

なみたろうさん、修正版間に合ったかな( ̄▽ ̄;)
フフフ~、薪にゃんはもう私の娯楽です(笑)

> 青木の愛を確認したかったんですか?マンネリマンネリ言われてプライドが許さなかったんですね?この僕に飽きるなど!?(笑)
> でも実地の経験がない!(爆)

はい(笑)おっしゃるとおりで…我慢ならなかったんでしょうね。で、空回り(^_^;)
薪にゃん相手だと青木強いです(*^^*)

> てか青木、途中からわざとですね?

あ、わかります?下向きながら慌て始める薪にゃんを観察してほくそ笑んでいたり?(笑)
青木にかわって翻弄してみたいもんです、薪にゃん!( 〃▽〃)

> 青木の「大好きですよ」ってセリフ、いいですね~。愛してるとか好きとかよりなんか、この二人らしくて可愛いなあああ~( ;∀;)

愛してます、より薪にゃんに合いそうな気がして…。まあ、子供っぽいって言われそうですが(゚∀゚;)

> 今お料理中に一息ついたところで見つけたんですけど、お菓子の材料はなかった~ッ!!しくった!!
> はい、飴ちゃん。

えらいのを見つけちゃいましたね(^o^;)
飴ちゃんカモン!щ(゜▽゜щ)

ハッ!もしや次は鞭が!?( ̄▽ ̄;)
なみたろうさんのハロウィンもお待ちしておりますよっ(^w^)

2015.10.06 Tue 18:45
Edit | Reply |  

Name - なみたろう  

Title - ギャグで来たか~ッ!!

ああもう。薪にゃん。もう。あなたって人は。
青木の愛を確認したかったんですか?マンネリマンネリ言われてプライドが許さなかったんですね?この僕に飽きるなど!?(笑)
でも実地の経験がない!(爆)

てか青木、途中からわざとですね?
めんどくさ可愛い薪にゃんの取り扱いに慣れてきやがってこの……原作青木くん、少し見習って下さい。
青木の「大好きですよ」ってセリフ、いいですね~。愛してるとか好きとかよりなんか、この二人らしくて可愛いなあああ~( ;∀;)

今お料理中に一息ついたところで見つけたんですけど、お菓子の材料はなかった~ッ!!しくった!!
はい、飴ちゃん。
2015.10.06 Tue 17:33
Edit | Reply |  

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